めまいの鍼灸治療


「めまい」と一言で言っても、様々な種類や症状があります。


脳梗塞や脳腫瘍など、命に関わる疾患が原因となる「中枢性めまい」を除けば、その他のめまいの多くは明確な原因が不明です。


裏を返せば、めまいは薬による治療で効果が得られにくい症状であると言えます。



めまいを訴えて当院に来られる方の多くは、すでに医療機関を受診し、一通り検査をしても原因がわからないと言われたり、または診断・治療を受けても効果が認められなかった方々です。


医療機関では、「良性発作性頭位めまい症」「メニエール病」「内リンパ水腫」「起立性調節障害」などの診断・治療を受けた方が多いようです。



数あるめまい症のうち、特に鍼灸治療で効果が出やすいのが「頚性めまい」「自律神経の失調に起因するめまい」です。



めまい




①頚性めまい


頚性めまいとは、頚部の異常筋緊張が原因で起こるめまいで、主に上頚部(頭蓋骨の直下)深部にある「後頭下筋群」と、頚部側面にある「胸鎖乳突筋」に異常緊張がみられることが多いです。


なかでも「後頭下筋群」は頚部の最深部にある細かい筋肉で、体表から触れることができないので、直接刺激を加えることができる鍼施術が大変有効です。


治効機序としては、これらの筋肉の緊張を緩めることで内耳や脳内の循環が改善し、また「前庭頚筋反射」を介して平衡機能が正常に働くのではないかと考えられています。




②自律神経の失調に起因するめまい


自律神経系のめまいを訴える方は女性が多く、特に思春期や更年期に多くみられます。


ホルモンバランスの乱れやストレスとの関連が指摘されており、頚部だけではなく背部の筋緊張や足の冷え、場合によってはのぼせがみられる場合もあります。(検査でホルモン値にさほど問題がなくても様々な症状が出る場合があります)



また、めまいは不安障害やパニック障害などでも多く見られ、精神的ストレスがめまいの症状と直結していることを示しています。


前庭の一部は大脳辺縁系と密接に関連しており、平衡機能を司る神経系は情動の調節系とも密接に関わっていると言われています。



このタイプのめまいで複数の患者さんがおっしゃるのは、常にフワフワしためまい感があり、たまに来る強い症状の時には回転することもある、というような具合です。


このような症状でお悩みの方には、局所の循環改善のみならず、自律神経や全身の気血の調整を行わなければなりません。


そのような点で、身体を総合的に診て施術をする鍼灸治療で効果を発揮しやすい症状であると言えます。